1.0L当たりで最強 ホンダS2000 「ワイスピ」きっかけの熱いJDM(3) 世界的ムーブメントを牽引
公開 : 2025.06.08 17:55
映画「ワイルド・スピード」シリーズで、カルト的な熱狂を巻き起こした日本車 遥かに高出力へ耐える2JZ オーバースペックなRB26DETT 高回転型のF20C UK編集部が象徴的3台を振り返る
俳優が所有していた車両を映画に採用
日産スカイライン GT-Rの安定性とは正反対の、オーバーステア傾向を見せるのが、1998年発表のホンダS2000。映画「ワイルド・スピード」シリーズの1作目では、ジョニー・トラン(リック・ユーン氏)が、発売間もないタイミングで乗り回している。
このS2000で話題となったのが、自然吸気エンジンとして、排気量1.0L当たり世界最強の馬力を誇ったこと。市場によって設定は異なるが、2.0L直列4気筒「F20C」ユニットは、250ps前後を発揮した。

前輪駆動を得意としたホンダによる、後輪駆動であることも注目を集めた。この時期の同社には、パフォーマンス・ブランドとして認知度を高めたい思惑があった。速いシビック以上のモデルを作るメーカーとして。映画での活躍は、そこへ好都合に働いた。
シリーズ1作目に登場するS2000は、実は俳優のRJ・デ・ヴェラ氏が所有していた車両。本人も脇役として、短時間だが登場している。
悪役の相棒に好適だった高回転型エンジン
ジョニーが運転するS2000は、完全なノーマルという設定だった。それでも、チューニングされたフォルクスワーゲン・ジェッタを、簡単に打ち破る加速を披露している。
第2作となる「トゥーファスト・トゥーフュリオス(ワイルド・スピードX2)」では、スーパーチャージャーで武装し、ピンクに塗装されたS2000が登場する。9000rpmまで吹け上がるF20C型エンジンとアグレッシブな走りは、悪役の相棒に好適だった。

R33型GT-Rと異なり、S2000でテールスライドを抑えるには、気持ちを鎮めた運転が求められる。カーブできっかけを与えれば、簡単にリアが流れ出す。運転のしやすさを重視したホンダのイメージを打ち破る、エッジの鋭さといえる。
スタイリングからイメージさせる通り、回頭性は敏捷。高負荷時の安定性を高めるべく、モデルライフを通じて何度かアップデートが実施されている。
チューニング文化を世界的なメインストリームへ
ワイルド・スピード・シリーズで、主役級の存在感を示した日本車3台。チューニングという文化を、世界的なメインストリームへ押し上げることに繋がった。
それまでは修理や整備が中心だったアメリカの自動車用品店、オートゾーンも、英国のハルフォーズも、社外ホイールやサスペンション、チューニング部品の販売へシフト。ウイングやカッティングシートなどのインターネット販売も、一気に急増した。

映画の効果が、すべてではないはず。それでも、ボディキットや派手なグラフィック、ネオンなどで着飾るスタイルは、直接的に広まったものといっていい。これへ反発するような、本物志向やJDM仕様で決めるスタイルも、同様だろう。
ドライバーズカーとしては、今回の3台で順位が下になるA80型トヨタ・スープラだが、取材中は多くの若者が真っ先にスマートフォンを向けていた。いずれも象徴的な日本車でも、四半世紀前にこのムーブメントを牽引したのは、タルガトップのスープラだ。
協力:イアン・アイゲルシャイム氏、グラント・ウィルマー氏、ブラックストーン・モーターズ社
画像 「ワイスピ」きっかけの熱いJDM スープラ スカイライン GT-R S2000 生き残る現行スープラも 全124枚