【見えぬ出口】日産が事業戦略抜本的見直し!聖域なきリストラ強化で2万人削減&国内7工場閉鎖

公開 : 2025.05.15 15:05

日産自動車2024年度決算報告を行いました。4月から新経営体制に変わり、リストラ策の見直しなどの噂が広まるなど大きな注目が集まっています。桃田健史による分析&解説です。

決算報告前からリストラ策の見直しの噂

日産自動車(以下、日産)が横浜市のグローバル本社で、2024年度(2024年4月〜2025年3月)決算報告を行った。

4月から新経営体制に変わった日産については、決算報告を前にリストラ策の見直しなどの噂がネット上などで広まるなど、世間からの大きな注目が集まった。

日産自動車が2024年度の決算を報告。会見に登場したイヴァン・エスピノーサ社長兼CEO。
日産自動車が2024年度の決算を報告。会見に登場したイヴァン・エスピノーサ社長兼CEO。
    日産自動車

小売販売台数実績では、2.8%減の334万6000台。仕向地別では、日産の主力市場である北米で3.3%増となったが、中国で12.2%、日本で4.8%、欧州で2.9%とそれぞれ減少。

これに伴い、売上高は12兆6332億円で、前年比は0.4%減にとどまった一方で、営業利益は前年比87.7%減と大きく落ち込み698億円。さらに、当期純利益は前期の4266億円から6709億円の大幅な赤字に転じた。

営業利益増減分析では、販売費用や価格改定など販売パフォーマンスの2999億円や、販売金融やマーケティングの変革などの費用で1351億円がそれぞれマイナス要因となった。

次に、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の見通しについてだ。

小売販売台数は、2.9%減少して325万台を想定。主要の北米では0.2%減、日本でも同じく0.2%減、また欧州では0.3%減と前期並とする一方で、EVやプラグインハイブリッド車(またはレンジエクステンダー)により市場環境が激化している中国では18.2%減とさらなるシェア低下を余儀なくされるものとしている。

生産台数については、10万1000台減少して300万台を想定した。

2025年度売上高見通し、営業利益と当期純利益は未定

2025年度の売上高見通しは、1332億円減少して12兆5000億円とするも、営業利益と当期純利益については未定。理由は当然、米国関税(いわゆるトランプ関税)の影響によるものだ。

直接的に台数に影響するのは、大きく2パターンある。

4月に就任したエスピノーサ社長兼CEO。難しい舵取りが迫られる。
4月に就任したエスピノーサ社長兼CEO。難しい舵取りが迫られる。    日産自動車

ひとつは、日本からアメリカへの直接輸出分の約12万台。モデルでは、アリアリーフフェアレディZ、ローグ、アルマーダ、そしてインフィニティQX80

もうひとつは、アメリカの隣国であるメキシコからアメリカへの輸出約30万台だ。

USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定:旧NAFTA『北米自由貿易協定』)を活用して、日産はメキシコ生産を強化してきた。車種は、ヴァーサ、セントラ、キックスインフィニティQX50、QX55。これらすべてで、全米販売台数の約半数となる。

仮に、米国関税に対して何も手を打たない場合、影響は最大で4500億円と見積もる。

対策としては、ローグをアメリカのスマーナ工場に生産移管したり、米国関税の対象となったモデルをアメリカ以外で販売したりするといったアロケーションなどをあげた。

さらに今回、事業再生計画『RE:NISSAN』(2025年度〜2026年度)を発表。これは前内田社長体制の際に、『ターンアラウンド』と呼んだ施策をさらに強化したものだ。

その中で、コスト削減目標を2024年度実績と比べて約5000億円とした。

具体的な方策としては、固定費の削減として2027年度までにグローバルで車両工場を現在の17から10に縮小する。また人員も同年度までに2万人減らす。また、開発の合理化やスリム化も進めるとした。

さらに、事業戦略全体として、開発戦略、主要市場戦略、商品戦略を抜本的に見直す。聖域なきリストラにより、日産の再生はなるのか、注目される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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