【ホンダ決算報告】関税影響6500億円!米EVシフトは5年遅れ、次世代ハイブリッド強化へ

公開 : 2025.05.15 16:05

本田技研工業がオンラインで、2025年3月期の決算説明会を行いました。二輪は好調ですが、四輪事業の販売台数は対前期9.6%減の371万6000台にとどまっています。桃田健史による分析、解説です。

中国とアセアンで市場競争が激化

本田技研工業(ホンダ)がオンラインで、2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算説明会を行った。

それによると、四輪事業の販売台数は対前期9.6%減の371万6000台にとどまった。仕向け別で見ると、ホンダの主要市場である北米で2万6000台増えて165万4000台、次いでアジアは46万9000台と大きく落ちて118万2000台、日本は3万5000台増の63万台、そして欧州は1万台減の9万3000台だった。中国とアセアンで市場競争が激化した。

ホンダ・シビックは2025年北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど好調。
ホンダ・シビックは2025年北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど好調。    本田技研工業

一方で、二輪事業は対前期9.3%増の2057万2000台を売上げ。二輪の世界シェアNo1を確保した。仕向地別では、アジアで146万2000台増と大きく伸びたほか、北米と欧州で着実に増えたことが要因だ。

また、小型発電機、小型耕運機などのパワープロダクト事業では対前期2.9%減の370万台だった。

ホンダ全体の売上収益は21兆6887億円で対前期6.2%増。営業利益は12.2%減の1兆2134億円となった。これは、第4四半期に四輪事業の製品保証引当金の想定方法を変更した影響が含まれている。これは一時的なものであり、今期以降の負担は減る見込みだ。

さて、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の見通しについてだが、二輪事業はアジアを中心に需要増があるとして2130台。だが、四輪事業はアジアでの減少がさらに続くと見て、9万6000台減の362万台とした。

EVシフト減速も2050年目標変えず

気になるトランプ関税の影響については、6500億円と見積る。内訳は、完成車で3000億円、四輪部品、原材料で2200億円、その他で1300億円だ。

こうした厳しい状況の中で、関税影響の挽回努力として2000億円を想定した。

アメリカでのEVシフトは当初のイメージより5年遅れていると、三部敏宏社長(写真は昨年12月のもの)。
アメリカでのEVシフトは当初のイメージより5年遅れていると、三部敏宏社長(写真は昨年12月のもの)。    本田技研工業

ホンダの場合、他の日本メーカーと比べると日本からアメリカへの直接輸出比率は低いが、カナダやメキシコなどUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を前提としたサプライチェーンを構築しており、その影響が少なくない。

短期的な対応策としては、北米向けシビックHEVをインディア工場に移管したり、アメリカ各工場での稼働シフトの見直しなどを検討する。仮にトランプ関税の影響が長引く場合、アメリカ国内工場の能力拡大(規模拡大)も視野に入れる。

またEVについて三部敏宏社長は、「アメリカでのEV(シフト)は(当初のイメージより)5年遅れている」として、当面の間は次世代e:HEVが北米市場での重要技術になるとの見解を示した。

その上で、ホンダが掲げる2050年カーボンニュートラルの目標設定は変えず、そこからバックキャスト(逆算)して2040年の新車100%EV、FECV化についても現時点でスタンスは変わっていないとした。

筆者の私見としては、ホンダが今、抜本的な事業変革が必要なのが中国事業だ。特にEVの中国市場専用車の投入が進むが、グローバルEVとの部品共有性をさらに進めるべきだろう。

また、経営悪化が懸念されている日産について、経営統合の再協議の計画は「ない」と断言。昨年8月から続けている、日産との次世代技術等に関する協業は継続するとのことだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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