この特別なGクラス、いいじゃない! 本物のオフロード車らしい雰囲気 英国記者の視点

公開 : 2025.05.27 18:45  更新 : 2025.05.27 22:14

現代の『Gクラス』はラグジュアリーSUVになったけれど、初代モデルのレトロな要素を取り入れ、オフロード車らしい雰囲気をうまく表現した特別仕様車は大好きだ! AUTOCAR英国記者のコラムです。

レトロな要素にやられてしまった

もし筆者が大金持ちだったとしても、新型のメルセデス・ベンツGクラスは買わないと思う。

もちろん、Gクラスは素晴らしいクルマだが、筆者はそれほど大胆な人間ではないし、本格的な4WD車に大径アルミホイールとロープロファイルタイヤを履かせるのは、どうも似合わない気がする。

Gクラスの特別仕様車『ストロンガー・ザン・ザ 1980s』
Gクラスの特別仕様車『ストロンガー・ザン・ザ 1980s』    メルセデス・ベンツ

しかし、ここに「1980年代よりもさらに強靭」をコンセプトにした特別仕様車が登場した。当時を思い起こさせる2種類のカラーバリエーション、オレンジ色のインジケーター、ブラックのグリルとライトサラウンド、そしてトラディショナルな雰囲気の18インチ5本スポークホイールと太い265/60 R18タイヤが装備されている。

ほんのわずかなディテールが、これほどまでに印象を変えるものなのか。筆者が「全然興味ない」と一蹴していたクルマが、「ラッピングなんて不要だ。このまま家に連れて帰ろう」と思うクルマになったのだ。

仕事の合間に、Gクラスのコンフィギュレーターを使ってみた(締め切りから目を背けたいときによく使う)。標準のモデルでも、サンド、ダークグリーン、ブルーなど、クラシックな「マヌファクトゥーア」のノンメタリックカラーを指定できるようになっている。

ホイールアーチとルーフをブラックにすることもできる。しかし、これらのオプションでは、特別仕様車のディテールほどクルマを大きく変えることはできない。

まず、新しい塗装色は「時代」を感じさせる(メルセデス自身も「ノスタルジックカラー」と呼んでいる)ものだと思う。それ以外の大きな変更点は、インジケーター、グリル、ホイールの3つだけ。特に注目すべきは、18インチのホイールだ。新型Gクラスの標準ホイールサイズは20インチである。

このような3つの小さなオプションで、これほど大きな違いが生まれるクルマは、他にないだろう。現代の自動車にレトロなデザインディテールを取り入れると、通常は不調和な感じが目立つが、Gクラスの場合、デザインがもともと初代モデルに非常に近いため、むしろよく似合っている。

人気のサテングレーのボディに、AMGモデルでは22インチの大径ホイールを装着する現代のGクラスだが、この特別仕様車はまるでレストモッドのような、アスレジャーウェアを身に着けた老紳士のような印象を与える。

初代ランドローバーディフェンダーの改造車やレストモッドも、一部では奇妙なLEDヘッドライトユニットや現代的な塗装仕上げ、明らかに大きすぎるホイールを装着するなど、同じようなミスを犯している。「1980年代よりも強靭」なGクラスは、ブローグブーツとツイードスーツに戻った英国紳士のようなもの。正しい姿を取り戻したように見える。

このような「レトロ」の話題については、以前も触れたことがあるような気がする。多くの自動車デザイナーは、レトロなデザインを嫌う。なぜなら、彼らにとっては古いものを焼き直すのではなく、新しいものを作るのが仕事だからだ。

しかし、Gクラスは新しいクルマではない。追加できるオプション装備の中には、かつて個性的な家屋に付けられていたような、白いレンダリングや灰色の窓枠のようなものもある。

ファッション性はさておき、この新しいGクラスはより本物らしく、より本質に近いと思う。大型4WD車に乗るのに、わざわざオフロードに適さないホイールとタイヤを装着し、トゲのある灌木に近づけないような塗装をする必要があるだろうか?

過去1年間で、筆者は光沢のある黒のアルミホイールとサテンブラックの塗装を施したランドローバー・ディフェンダー130と、そのどちらも施されていないイネオス・グレナディアを何度か運転した。

運転する上では、ディフェンダーの方が優れている。穏やかで、リラックスでき、快適性と静粛性が高く、オフロード性能も抜群、そして牽引能力も英国では抜群だ。しかし、グレナディアの方はあまり目立たない。スペック的には、そちらを選ぶのだけど。

おそらく筆者は、他人の評価を気にかけないような人生段階にはまだ達していないのだろう。しかし、クルマ、特に必要ではなく欲求から購入したクルマは、オーナーの個性を表しているのではないだろうか?

このGクラスは、当初の意図通りに仕様が決められ、製造され、所有されているように見える。たとえ普通のクルマよりも少し「劣る」としても、筆者はこのクルマを運転したい。

タイヤはおそらく方向安定性が低く、ステアリングも重くはずだし、おそらく重量が増えるため、乗り心地も良くないだろう。筆者が浅はかに見えるだろうか? まあ、それは仕方ない。

筆者がこのGクラスで唯一気になる部分は、「1980年代よりもさらに強靭(STRONGER THAN THE 1980s)」と大きく書かれた車内のグラブハンドルだ。

その文字が、1980年代のヒット曲で埋め尽くすステレオの近くに書かれているのは、筆者には耐えられない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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