フェラーリ・テスタロッサが307万円?(1) 艶ないプライマー・ボディ ルーフは大胆カット済み
公開 : 2025.05.22 19:05
艶のないプライマー・グレーが目を引く、スパイダーのテスタロッサ メカは完璧に仕上げつつ、見た目は維持 燃えないよう祈りながらV12エンジン始動 UK編集部が突飛なフェラーリへ
艶のないプライマー・グレーのボディ
このフェラーリ・テスタロッサには、内装がある。運転席側のドアハンドルも。だが助手席側のハンドルは、引くと内装ごと転げ落ちる。ルーフは、大胆にカット済みだ。
筆者が運転させていただいたのは、ボロボロ状態のラットスタイルを極めたテスタロッサ。SNSなどでは、ラッタロッサとして知られている。フォルクスワーゲンのようなモデルでラットスタイルは珍しくないが、フェラーリでは他に例はあるのだろうか。

ボディはプライマーのグレーで、艶はない。エンジンカバーは、辛うじて載っている感じ。それでもエンジンは180度のV型12気筒で、トランスミッションは5速マニュアル。どちらも、換装されていないオリジナルだという。
オーナーのスコット・チヴァース氏は、レストアするつもりで放置していた、アメリカ・カリフォルニア州の男性からこれを買い取った。車両代と英国への輸出手数料など、すべてコミコミで1万6000ポンド(約307万円)だったという。安さに驚く。
燃えないよう祈りながらエンジン始動
雑に乗る感じは、アメリカのドラマ、マイアミ・バイスをイメージさせる。しかし、実際の運転は恐怖との背中合わせだ。
イグニッションキーを回す前に、燃えないよう祈る。右手の先には、美しいゲートから伸びるシフトレバー。左上がリバースの、シフトパターンを改めて確認する。V12エンジンは何事もなく目覚めた。

ペダルの並びはタイト。スパルコのレーシングシューズを履いていないと、ちょっと厳しい。クラッチペダルは、1t位あるように固い。ステアリングホイールも、タイヤが地面へ張り付いたように重い。
アクセルペダルを軽く踏み込む。機械的な唸りと、吸気音がハーモニーを奏でる。年配の隣人から苦情があったらしいが、うなずけるうるささだ。少なくとも、発進は驚くほど滑らか。2速から上の変速は、スプリングで押し戻されるような感覚がある。
見た目はボロでもテスタロッサは素晴らしい
シフトアップしても、エンジンは即座に回転数を高める。水温は安定。排気ガスは、冷間時にやや水色だったが、無色へ転じた。お手製のスパイダーでも、60km/h程度ならボディは驚くほど強固に感じられる。
ブレーキは頼もしく、制動力を調整しやすい。ステアリングは、速度が増すと軽くなるが、クイックなわけではない。ほんのりガソリンの匂いがする。「少し漏れているんですよね」。助手席のチヴァースが、穏やかに教えてくれた。

見た目はボロでも、テスタロッサは素晴らしい。他に類のない、スーパーカーだと思う。チヴァースの満足げな表情も、それを裏付けている。