フェラーリ・テスタロッサが307万円?(1) 艶ないプライマー・ボディ ルーフは大胆カット済み

公開 : 2025.05.22 19:05

艶のないプライマー・グレーが目を引く、スパイダーのテスタロッサ メカは完璧に仕上げつつ、見た目は維持 燃えないよう祈りながらV12エンジン始動 UK編集部が突飛なフェラーリへ

艶のないプライマー・グレーのボディ

このフェラーリテスタロッサには、内装がある。運転席側のドアハンドルも。だが助手席側のハンドルは、引くと内装ごと転げ落ちる。ルーフは、大胆にカット済みだ。

筆者が運転させていただいたのは、ボロボロ状態のラットスタイルを極めたテスタロッサ。SNSなどでは、ラッタロッサとして知られている。フォルクスワーゲンのようなモデルでラットスタイルは珍しくないが、フェラーリでは他に例はあるのだろうか。

フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)
フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)

ボディはプライマーのグレーで、艶はない。エンジンカバーは、辛うじて載っている感じ。それでもエンジンは180度のV型12気筒で、トランスミッションは5速マニュアル。どちらも、換装されていないオリジナルだという。

オーナーのスコット・チヴァース氏は、レストアするつもりで放置していた、アメリカ・カリフォルニア州の男性からこれを買い取った。車両代と英国への輸出手数料など、すべてコミコミで1万6000ポンド(約307万円)だったという。安さに驚く。

燃えないよう祈りながらエンジン始動

雑に乗る感じは、アメリカのドラマ、マイアミ・バイスをイメージさせる。しかし、実際の運転は恐怖との背中合わせだ。

イグニッションキーを回す前に、燃えないよう祈る。右手の先には、美しいゲートから伸びるシフトレバー。左上がリバースの、シフトパターンを改めて確認する。V12エンジンは何事もなく目覚めた。

フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)
フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)

ペダルの並びはタイト。スパルコのレーシングシューズを履いていないと、ちょっと厳しい。クラッチペダルは、1t位あるように固い。ステアリングホイールも、タイヤが地面へ張り付いたように重い。

アクセルペダルを軽く踏み込む。機械的な唸りと、吸気音がハーモニーを奏でる。年配の隣人から苦情があったらしいが、うなずけるうるささだ。少なくとも、発進は驚くほど滑らか。2速から上の変速は、スプリングで押し戻されるような感覚がある。

見た目はボロでもテスタロッサは素晴らしい

シフトアップしても、エンジンは即座に回転数を高める。水温は安定。排気ガスは、冷間時にやや水色だったが、無色へ転じた。お手製のスパイダーでも、60km/h程度ならボディは驚くほど強固に感じられる。

ブレーキは頼もしく、制動力を調整しやすい。ステアリングは、速度が増すと軽くなるが、クイックなわけではない。ほんのりガソリンの匂いがする。「少し漏れているんですよね」。助手席のチヴァースが、穏やかに教えてくれた。

フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)
フェラーリ・テスタロッサ(1984〜1992年/スパイダー仕様)

見た目はボロでも、テスタロッサは素晴らしい。他に類のない、スーパーカーだと思う。チヴァースの満足げな表情も、それを裏付けている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    役職:特派員
    フリーランスのジャーナリストで、AUTOCAR英国編集部の元スタッフ。姉妹誌『What Car?』誌の副編集長や『Practical Caravan誌』の編集長なども歴任した。元自動車ディーラーの営業マンという経験を活かし、新車・中古車市場や消費者問題について幅広く取り扱っている。近年は、これらのニュースや特集記事に加え、アイスクリーム・ワゴンのDIY方法から放置車両の探索まで、さまざまな記事を寄稿している。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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